21-22シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)もいよいよ準決勝を迎えます。ここまで順調に勝ち上がってきたリバプールの相手はビジャレアルとなっています。
ビジャレアルがCLのベスト4まで残っていることはサプライズと言えるでしょう。ラ・リーガでの順位は7位(2022年4月25日時点)と、それほど成績が良いわけではありません。しかし、CLにおいては、ビッグサプライズを提供しています。
今回の記事では、リバプールの対戦相手となるビジャレアルについて、チームのメンバーや印象などを紹介していきます。
ビジャレアル 今季ここまでの成績
まず初めに、ビジャレアルの今季の成績を振り返ります。CLではベスト4まで勝ち上がっていますが、ラ・リーガでの成績はそれほど良くありません。33試合を終えた時点で、14勝10分9敗で勝点52の7位につけています。
順位 | チーム名 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 勝点 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | レアル・マドリー | 33 | 24 | 6 | 3 | 78 |
2 | バルセロナ | 33 | 18 | 9 | 6 | 63 |
3 | セビージャ | 33 | 17 | 12 | 4 | 63 |
4 | アトレティコ・マドリー | 33 | 18 | 7 | 8 | 61 |
5 | ベティス | 33 | 17 | 6 | 8 | 57 |
6 | ソシエダ | 33 | 15 | 10 | 8 | 55 |
7 | ビジャレアル | 33 | 14 | 10 | 9 | 52 |
豊富なタレントを抱えているビジャレアルとしては、来季のCL出場権獲得を狙いたいところでしょう。しかし、現状では4位のアトレティコ・マドリーに9ポイントの差を開けられています。
また、スペインの国内カップ戦である、コパ・デル・レイにおいても、今季は早々に敗れています。2部のスポルティング・ヒホンに敗れており、勝ち上がることはできませんでした。
国内のコンペティションでは、期待ほどの成績を残せていないビジャレアルですが、欧州の舞台ではここまで大きなサプライズを提供しています。ビジャレアルのCLにおける成績を下記の表にまとめました。
ラウンド | 対戦相手 | スコア | 結果 | ホーム&アウェイ |
---|---|---|---|---|
グループリーグ | アタランタ | 2-2 | △ | ホーム |
グループリーグ | マンチェスター・ユナイテッド | 1-2 | × | アウェイ |
グループリーグ | ヤング・ボーイズ | 4-1 | 〇 | アウェイ |
グループリーグ | ヤング・ボーイズ | 2-0 | 〇 | ホーム |
グループリーグ | マンチェスター・ユナイテッド | 0-2 | × | アウェイ |
グループリーグ | アタランタ | 3-2 | 〇 | アウェイ |
決勝T1回戦 | ユベントス | 1-1 | △ | ホーム |
決勝T1回戦 | ユベントス | 3-0 | 〇 | アウェイ |
ベスト8 | バイエルン | 1-0 | 〇 | ホーム |
ベスト8 | バイエルン | 1-1 | △ | アウェイ |
ここまでのビジャレアルは、数々の強豪チームに競り勝ってきました。グループリーグでは、アタランタを接戦の末に退け、2位で決勝トーナメントに進んでいます。決勝トーナメントでは、強固な守備ブロックとカウンターを武器に、アウェイでユベントスを沈めています。
これだけでも大きな躍進でしたが、ベスト8ではバイエルンまで沈めてしまいました。この時も強固な守備ブロックで我慢を続け、破壊力のあるカウンターでゴールを奪い切っています。ベスト4に進出し大躍進を遂げたビジャレアルですが、リバプール相手にもサプライズを起こすことを狙っているでしょう。
Embed from Getty Imagesエメリ・ビジャレアルのメンバー
次に、ビジャレアルのメンバーを紹介していきます。チームを率いるのはウナイ・エメリ監督で、過去にはセビージャやPSG、アーセナルを率いていました。現在のエメリが率いるビジャレアルには、非常に強力なプレイヤーが揃っている印象です。下記は、エメリがバイエルンとの2試合で起用したメンバーです。
エメリのチームはバイエルンとの2試合で4-4-2を採用しています。ビジャレアルは伝統的に4-4-2で戦っているイメージが強いチームですね。そして、各ポジションに実績豊富でレベルの高い選手を揃えています。
センターバックのアルビオルとパウ・トーレスは非常に球出しに長けた選手です。アルビオルは、マウリツィオ・サッリが率いたナポリでプレーしており、完成度の高いパスサッカーを体現していました。一方のパウ・トーレスは、スペイン代表でも将来が期待されている若いディフェンダーです。足元の技術に定評があり、ディフェンスラインからの球出しを得意としています。
エメリが採用したメンバーにおいて、2列目のラインを形成している選手が全員ボランチタイプというのは興味深い点です。サイドで起用されているコクランとロ・チェルソですが、元々は中央でプレーしていた選手たちです。ロ・チェルソには攻撃的なイメージがありますが、コクランは中盤の潰し屋としてアーセナルでプレーしていました。エメリとしては、守備的な能力も高い選手たちをサイドにも配置し、4-4-2の守備力を高めていると考えられます。
そして、ビジャレアルは非常に強力な2トップを擁しており、彼らがカウンターの起点となります。エースのジェラール・モレーノは得意の左足で近年はゴールを量産している印象があり、今季ビジャレアルに加入したダンジュマもリーグで10ゴールを上げています。
Embed from Getty Images上記はバイエルン戦のスタメンとなった選手たちですが、ベンチにも有力な選手が多数控えており、チームの層も厚いです。経験豊富なボランチの選手である、ビセンテ・イボーラやマヌ・トリゲロスに加え、サイドでのドリブル突破を武器とするチュクエゼがベンチに控えています。バイエルン戦の2ndレグでは、チュクエゼが途中出場からゴールを決め、チームを準決勝に導きました。
他にも、スペインの至宝として注目されているジェレミ・ピノや、バレンシアやドルトムントではゴールを量産していた印象のあるパコ・アルカセルなどの攻撃的なタレントもベンチに控えています。現在は怪我で戦線離脱中ですが、リバプールでプレーしていたアルベルト・モレーノも現在はビジャレアルに在籍していますね。
15-16 ELでのビジャレアルとの対戦
ビジャレアルと言えば、リバプールファンとして思い出すのは15-16シーズンのヨーロッパリーグ(EL)です。15-16シーズンはクロップがシーズン途中に就任したシーズンでしたが、当時は低迷していたリバプールを、いきなり2つのカップ戦ファイナルに導きました。リーグカップとELです。
共に決勝で敗れ、戴冠は叶わなかったものの、その後の黄金時代の到来を予感させてくれる瞬間でした。特にELではドルトムントを大激戦の末に制し、リバプールファンにとっての伝説的な試合になっています。
ビジャレアルと対戦したのは、準々決勝でドルトムントに勝利した後の準決勝でした。時のビジャレアルを率いていたのは、マルセリーノ・ガルシア監督です。4-4-2の整備された守備組織を使いこなすのが得意な監督で、現在のエメリが率いるビジャレアルと似たチームでした。
15-16シーズンのELでは、1stレグがビジャレアルのホームである、エスタディオ・デ・ラ・セラミカで行われ、ビジャレアルが1-0で勝利しました。しかし、続くアンフィールドでの2ndレグはリバプールが3-0で快勝を収め、決勝進出を決めています。下記の動画がそれぞれの試合のハイライトになります。メンバーを見ても非常に懐かしいですね。
そして、この時のビジャレアル戦を制して進んだ決勝で対戦したのが、ウナイ・エメリの率いるセビージャでした。前半にスタリッジのスーパーゴールで先制し、良い流れで試合を進めていたリバプールですが、後半に3発を浴び、敗戦しています。
当時からウナイ・エメリはトーナメントでの戦いが非常に巧みな監督です。セビージャ時代は無類のトーナメントの強さで、セビージャをEL3連覇に導いています。クロップ・リバプールは、エメリがアーセナルを率いていた時に何度か対戦していますが、スペインのチームを率いるエメリへのリベンジマッチとなりそうです。
リバプールvsビジャレアルの展望
最後に、CL準決勝の展望を考察します。ビジャレアルは決勝トーナメントでここまで、ユベントスとバイエルンを倒してきており、実力・勢い共に十分です。トーナメントで強みを発揮する、ウナイ・エメリの真価が発揮されていると言えるでしょう。
エメリ・ビジャレアルの基本的な戦い方は、4-4-2でブロックを形成し、カウンターアタックを繰り出すサッカーです。実力的には格上であろうリバプール相手にも戦い方は変わらないでしょう。ビジャレアルは伝統的に守備ブロックが強固というイメージのあるチームですが、エメリが手を加えて更に強固になっている印象です。圧倒的な破壊力を誇るバイエルンですら、180分で1点しか奪えませんでした。
また、ボールを奪った直後に繰り出されるカウンターアタックも強烈です。2トップのジェラール・モレーノとダンジュマは個人でもフィニッシュに持っていくことのできる、能力の高い選手です。その2人に、ロ・チェルソが絡むカウンターの威力は強烈でしょう。また、中盤にはパレホのようなパサーがおり、前線に鋭いスルーパスを配給することができます。このあたりのカウンターは、リバプールにとっても非常に脅威になるでしょう。
リバプールとビジャレアルの試合は、1stレグはリバプールのホームであるアンフィールドで、2ndレグはビジャレアルのホームである、エスタディオ・デ・ラ・セラミカで行われます。勝負のポイントは、ビジャレアルがリバプールの攻撃をアンフィールドでどこまで抑えられるか、でしょうか。ホームの声援を受けて2ndレグを戦えるビジャレアルとしては、アウェイのアンフィールドで失点を避けることに最も注力すると思われます。
対するリバプールとしても、アンフィールドで試合を決め切ってしまいたいところでしょう。しかし、ユベントス、バイエルンを連続して倒してきたビジャレアルは侮ることのできない相手です。ここまで、4冠の可能性を残しているリバプールですが、CL準決勝は決して簡単な舞台ではありません。リバプールファンとしては、CL決勝を戦い、再び選手たちがビッグイヤーを掲げる姿を見てみたいものです。