激戦を制して3連勝 リバプールvsアトレティコ・マドリー 振り返り

 日本時間10月20日(水)早朝、チャンピオンズリーグのグループリーグ第3節、アトレティコ・マドリーvsリバプールの試合が行われました。会場はアトレティコ・マドリーのホーム、ワンダ・メトロポリターノ。結果は、2-3でリバプールの勝利となっています。これでチャンピオンズリーグ開幕3連勝となったリバプール。死の組Bグループの首位を走っています。本記事では激戦となったアトレティコ・マドリー戦を振り返りたいと思います。

望外の序盤で2点リードのリバプール

 前半の立ち上がり、アトレティコは予想通りに緻密な守備ブロックを自陣に組み、守備的な姿勢でゲームに入ってきました。5-3-2でブロックを組み、堅く守ってジョアン・フェリックスとグリーズマンを起点としたカウンターでゴールを狙おうというゲームプランだったでしょうか。

 対するリバプールは、引いた相手に対してポゼッションを握ります。そして、開始早々にサラーとナビ・ケイタのゴールによって2点のリードに成功しました。堅守を強みとし、この試合でもゲーム全体を固めてしまおうとしたアトレティコ相手に序盤での2点リードは、リバプールとしても望外だったでしょうか。

 最初の得点はサラーの個人突破から生まれましたが、今季のサラーは非常にハイレベルです。マンチェスターシティ戦、ワトフォード戦に続いて、個人の力でゴールを生み出してしまいました。リバプールの2点目は、良いタイミングでナビ・ケイタの前にボールがこぼれ、上手くボレーを叩き込みました。こちらも難度の高いゴールであり、組織的なアトレティコの堅守に、個人技が炸裂します。前半15分もたたないうちでの2得点はリバプールとしても望外だったでしょうか。

ブロックがやや嚙み合わなかったアトレティコ

 アトレティコはこの試合、5-3-2のブロックを組んでやや守備的にゲームに入りました。3センターバックで中央を固め、ウィングバックの選手も下げて5バックにすることで、リバプールが得意とするサイドを封じてしまおうというブロックでした。しかし、序盤はブロックを構成する2列目の3枚の両脇を突かれるシーンが目立ちます。

 リバプールが左サイドでボールを保持している際、アトレティコの中盤3枚はボールサイドに集中します。その間、逆サイドのアレクサンダー・アーノルドが中央に入り、アトレティコの中盤の3枚で形成されるブロックの外側を上手く活用していました。リバプールの2点目は、アトレティコの中盤のブロックの外側でボールを持ったアーノルドを起点に生まれたゴールでした。

 アトレティコの守備ブロックが、中盤に侵入してくるアーノルドへの対応に苦慮した理由として、リバプールサイドバックへのプレスのかけ方が考えられます。リバプールの攻撃の起点になることが多いロバートソンとアーノルドの両サイドバックに対し、アトレティコは左右で異なるプレスのかけ方をしていました。ロバートソンには、ウィングバックのトリッピアーが縦にスライドしてプレスを行うのに対し、アーノルドにはインサイドハーフのルマルが横にスライドしていました。トリッピアーが最終ラインを離れた際には、穴を埋めるために最終ラインがやや右にスライドせねばならず、そこから左にサイドチェンジをされたときに元に戻る対応が遅れた部分がアトレティコとしてはあったでしょうか。

前半15分の時点では、ゲームプランが崩壊したアトレティコ。その後のゲーム展開は、リバプールの楽勝ムードかと思いました。固めて1発を狙うゲームプランにおいては、序盤で2点を追う展開は非常に困難です。しかし、その後の展開でアトレティコは試合巧者ぶりを見せつけました。

用意されたカウンターから追いつくアトレティコ

 2点を先行され、後がなくなったアトレティコはややプレスを強めます。自陣にブロックを敷くという基本的な戦い方は変えず、局所的にボールを奪えそうな局面でのインテンシティは高まったように思います。そして、シメオネは対リバプールのカウンター策をしっかり用意していたのではないでしょうか。

 リバプールはボールを持って攻め込む際、サイドバックが非常に高い位置まで進出します。基本的に最終ラインに残っているのはセンターバック2枚なので、背後には広大なスペースを残しています。アトレティコは、自陣からのロングボールをこのスペースに放り込むことにより、リバプールゴールに迫る機会を増やしていきます。基本的に対人守備では負けないマティプとファン・ダイクですが、広大なスペースを上手く使われると対応が難しくなります。これはブレントフォード戦でも見られた現象ではないでしょうか。

 ボールを奪ってからリバプール陣内に侵入することが増え始めたアトレティコは、左サイドを中心に攻撃に人数をかけ始めます。カラスコ、ルマルに加えて、フェリックスも流れるアトレティコの左サイドは非常に脅威でした。リバプールが2失点したシーンは、ナビ・ケイタの対人守備がやや軽率な対応に終わったこともありましたが、ルマルやフェリックスが個で局面を打開する力を見せたシーンでもありました。

 前半のうちに追いつかれたリバプール。ボール保持の時間は変わらず長いものの、効果的な攻撃を続けられずにいました。反対に、アトレティコはカウンターからチャンスを作るシーンが多く、リバプールとしてはアリソンに何度も救われることになります。

勝負を決めた後半のジャッジ

 前半の立ち上がりは良かったものの、2点差を追いつかれてピンチのシーンも多かったリバプール。後半はどちらに転ぶかわからず、勢いの面ではホームのアトレティコにやや分があるような状況だったでしょうか。

 しかし、そんな状況もグリーズマンの一発退場によって大きく変わります。足をあげてボールに触りに行ったグリーズマンが、結果的にフィルミーノの顔に蹴りを入れる形に。危険なプレーとして一発レッドの対象となりました。プレイヤー心理だと、ボールが上空に上がった際、ボールに目を奪われてしまうと周囲の状況が見えなくなってしまいます。あのような状況で周囲が見えず、足が上がってしまうのは仕方ないかと思いますが、フィルミーノの頭に足が入ったプレーは結果的にレッドカードの対象でした。

後半開始早々に数的優位に立ったリバプールでしたが、アトレティコは堅守を持ち味とするチーム。10人でも守り切る力があり、先のプレミアリーグのチェルシー戦を想起させます。実際、数的優位に立った後も効果的なチャンスを数多く生み出すには至りません。ジョタやチェンバレンを投入し、彼らがゴールを脅かすシーンは増えたものの、ゴールを奪えずに時間が過ぎていきます。しかし、75分を過ぎたあたり、ジョタが倒されてPKを獲得。サラーがこれを冷静に沈めます。

 その後も、10人のアトレティコにチャンスを創られるシーンもあり、予断を許さない展開が続きます。アトレティコに与えられたPKがVARよって取り消されるシーンもありました。最後まで何とか1点差を守り抜いたリバプール。貴重な勝点3を入手しました。

グループBの現状整理

 全チームとの対戦を1順し、グループステージも折り返し地点に到達しました。グループBでは、リバプールが無傷の3連勝で首位に立っています。それに続くのは、勝点4で並ぶアトレティコ・マドリーとポルト。ACミランは、今節もアウェイでポルトに敗れ、3連敗スタートとなっています。

 死の組と呼ばれるグループBですが、まさにレベルの高い争いが繰り広げられています。ミランは今季、セリエAでここまで負けなしですが、CLでは全敗と苦しんでおり、グループのレベルの高さが伺えます。リバプールとしては、次節勝つことができればグループ突破を決められます。相手はアトレティコ・マドリー、会場はアンフィールドです。再び難しい戦いが予想されますが、勝って早めにグループ通過を決めてしまいたいところです。