内容では圧倒もスコア上は僅差 興奮冷めやらぬミラン戦を振り返る

 いよいよ開幕した今シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ。リバプールはグループリーグの開幕戦で、ACミランをホームに迎えました。グループBはミランに加え、アトレティコ・マドリー、ポルトと同居する死の組となっています。今季、ミランはセリエAで開幕3連勝スタート。好調の状態を維持したままアンフィールドに乗り込んできました。

 試合の結果は3-2でリバプールの勝利。リパプールが立ち上がりに先制したものの、前半終了間際の2失点でミランが逆転します。しかし、後半も積極的に攻勢に出たリバプールが再逆転するという、非常にスリリングなゲームとなりました。

リバプールのハイプレスがミランを圧倒

 立ち上がりからリバプールが猛烈なプレスを実行。ピオーリ監督も試合後に述べていますが、ミランが想定していた以上のプレスで、ミランを圧倒します。前線からの激しいプレス、高いインテンシティにミランは完全に飲み込まれていました。ミランとしては、ラインを低く設定して手堅くゲームに入ろうというプランだったでしょうか。しかし、イタリアではあまり経験しないような高いインテンシティ、アンフィールドの雰囲気に対応するのは難しそうでした。

 立ち上がりから一方的に相手を攻め立てたリバプール。クロップのチームの激しいスタイルとアンフィールドの雰囲気は非常に良い相乗効果を生んでいます。リバプールは立ち上がりの攻勢から幸先よく先制点を奪います。そして立て続けにPKを獲得し、追加点のチャンス。しかし、サラーがこのPKを失敗。サラーのリパプールでのPK失敗は21本ぶり、リパプール加入後では2度目とのことです。

 その後もポゼッションを維持し、相手を押し込むのはリバプール。ミランのカウンターの芽も素早く摘んでいきます。一方のミランは守備ラインを低く設定してリバプールの攻撃を受け止め、ゲームを落ち着かせようと試みます。この辺りの守備ブロックは、さすがイタリアのチーム。うまくスペースを消し、リバプールに決定的なチャンスを与えません。時間と共に高いインテンシティにも慣れ、またリバプール側の最大出力も弱まってきます。徐々にポゼッションの機会を得たミランは、前線の選手にボールを送り、チームの特徴である高い攻撃力を発揮しようとします。前線にボールが入った際、後ろから選手がボールホルダーを追い越して攻撃に人数をかけるのがこのチームの特徴です。

 そして前半の最終盤、アンテ・レビッチとブラヒム・ディアスが立て続けにゴールを奪い、ミランが逆転に成功。圧倒的に試合を優位に進め、ミランにはほとんど何もさせなかったリバプールですが、数分でスコア上で劣勢に立たされます。これがフットボールの怖さでしょう。どれだけ内容で優位に立っていたとしても、一瞬の隙や運が結果に大きく影響することが往々にしてあります。前半終了間際、ミランの攻撃陣はリバプールディフェンスの一瞬の綻びを的確に咎め、逆転に成功しました。リバプールとしては対応に改善の余地はあるものの、フットボールでは起こり得る守備の綻びでしょうし、100%完璧な守備を続けることは不可能です。良いタイミングで人数をかけ、ゴールを奪い切ったミランの攻撃陣はさすがでした。

後半もミランを押し込み再逆転

 リードされた状態で後半を迎えたリバプール。内容では後半もゲームを支配し、ミランを封じ込めます。前半立ち上がりほどのプレスの強度はなかったものの、MF陣が的確にセカンドボールを回収、ディフェンス陣はデュエルが制すことでミランの攻撃の芽を摘んでいました。攻撃面ではミランの組織的な守備を前に決定機を生み出す機会はそれほど多くなかったですが、オリギのクリエイティブなループパスからサラーがゴールし同点。そして、コーナーの跳ね返りをヘンダーソンがスーパーな低弾道ボレーでゴールに突き刺し、勝利を手にすることができました。

サプライズのオリギ、安定のファビーニョとアーノルド

 各選手のパフォーマンスを振り返ると、まず印象的な活躍を見せたのはオリギでしょうか。今夏の放出候補と目され、ここまでリーグ戦でもベンチ外など、出番のなかったオリギ。ミラン戦でのスタメンは少々予想外でした。しかし、そのパフォーマンスレベルは高く、前線で攻撃の起点になる役割と、ディフェンスの開始点になる役割を適切にこなしていました。2点目のサラーへのアシストも素晴らしく、良いサプライズだったのではないでしょうか。思い返せば、オリギが大活躍した18-19シーズンも夏の放出候補と言われていました。今季もファンを驚かせてくれることを期待したいです。

 そして、今季ここまで安定して高いパフォーマンスを発揮しているのが、ファビーニョとアレクサンダー・アーノルドでしょう。ファビーニョは中盤のフィルターとして、ミラン戦でも何度も相手の攻撃の芽を摘んでいました。足を出してボールを奪いに行くタックルは、少しでもタイミングを間違えると簡単に置き去りにされるプレーです。ファビーニョはそんなプレーを毎試合繰り返し、何度もボール奪取に成功しています。まさに職人芸です。

 アレクサンダー・アーノルドのチャンスクリエイト力も今季は力を増しているように感じます。今季は中盤に進出していく機会も増えているアーノルド。外側と内側への侵入を使い分けながら、高い精度の右足を振り抜く機会を伺っています。キックの精度が一時的に落ちてしまうこともありましたが、今季はここまで非常に好調。今後の活躍に更なる期待をしたい選手です。

 CLはグループステージの第1節の日程を終えました。次節、リバプールはアウェイでポルトと対戦します。ポルトは今節、アウェイでアトレティコ・マドリーと対戦、0-0で引き分けています。その結果、現在グループBで首位に立っているのはリバプールです。

 また、週末にはリーグ戦、ホームでのクリスタル・パレス戦が開催されます。試合が続く時期に入ってきましたが、今季もこのまま強いリバプールを維持して欲しいものです。