【現地観戦記】18-19シーズン CL準決勝のバルセロナ戦を回想

 21-22シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)は、準決勝に到達しました。リバプールはアンフィールドで行われたビジャレアルとの初戦を2-0で勝利し、決勝進出に向けて幸先の良いスタートとなっています。リバプールにとっては、準決勝に進出したのは18-19シーズン以来です。

 18-19シーズンのチャンピオンズリーグでは、リバプールは準決勝でバルセロナと対戦しています。1stレグのカンプノウでの戦いは0-3で落としたものの、続くアンフィールドでの一戦に4-0で勝利し、大逆転で決勝進出を決めました。その後の決勝戦もトッテナムに2-0で勝利し、見事にビッグイヤーを掲げています。

 筆者は、この18-19シーズンのCL準決勝の1stレグをカンプノウで観戦していました。当時はバルセロナに在住しており、カンプノウに駆けつけることができました。0-3での敗戦という非常に悔しい観戦でしたが、その後の結果によって非常に良い思い出に変わっています。今回の記事では、カンプノウでの観戦記をはじめとした、18-19シーズンのバルサ戦について書いていきます。

当時の両チームの状況

 18-19シーズンのリバプールとバルセロナは非常に良いチーム状態にあったと思います。リバプールは、プレミアリーグでマンチェスター・シティとのデッドヒートのタイトルレースを繰り広げており、最後までリーグで手の抜けない状態が続いていました。1ポイント差でシティ首位、リバプール2位で、両チームが勝ち続けるという状況は21-22シーズンに酷似しています。結果的に1ポイント及ばず、リーグタイトルはシティに譲ることになりました。このシーズンは、アンフィールドで行われたシティ戦も現地観戦しており、その時のことは以下の記事で紹介しています。

 プレミアリーグでも好調を維持していたリバプールですが、PSGとナポリと同居したグループリーグでは苦戦を強いられます。ナポリ、PSGに加え、伏兵であったセルビアのツルベナ・ズベズタにアウェイで敗れ、3敗を喫しました。しかし、最終節にナポリにホームで競り勝ち、グループリーグを突破しました。

 決勝トーナメントでは、1回戦でバイエルンと激突すると、激闘を制して勝ち上がり、準々決勝では順当にポルトを降しての準決勝進出でした。リーグ戦では安定した強さを見せていたものの、CLのグループリーグではかなりギリギリの戦いでヒヤッとしたのを覚えています。

 一方のバルセロナも、シーズンを通して好調を維持し、最終盤には3冠に挑戦したシーズンでした。エルネスト・バルベルデのサッカーは、ブロックを構築してカウンターを狙う局面も多く、バルサらしくないと批判されることもありましたが、結果は残していました。

 ラ・リーガでは、レアル・マドリーがロペデギの下で序盤に躓いたこともあり、余裕を持って優勝を視野に入れると、CLでも順当に勝ち上がります。グループリーグでは、インテル、トッテナム、PSVと同居した中で、他を寄せ付けずに勝ち上がり、決勝トーナメントでもリヨンとマンチェスターユナイテッドを順当に降しました。ピッチ外でのゴタゴタはあった印象ですが、ピッチ内では非常に順調だったかと思います。

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意気揚々とバルセロナに乗り込むKOP

 CLの準決勝が行われるのは4月末~5月の上旬にかけてです。この頃のリバプールは、プレミアリーグでもシティとのタイトルレースが佳境に入っており、サポーターは興奮状態にありました。CLでも前シーズンに決勝で敗れた悔しさを晴らすべく、1stレグのアウェイでの一戦には多くのリバプールサポータが乗り込みました。

 私は当時、バルセロナに住んでいましたが、平日にも関わらず多くのリバプールサポーターがバルセロナの街にやって来たことを覚えています。街中にリバプールのシャツを身にまとい、チャントを歌うリバプールファンが散見されました。バルセロナの街で集まってビールを片手にチャントを歌う姿には英国のフットボール文化を感じました。

 試合当日は、私も休みを取得してチケットの獲得に全力を尽くしました。カンプノウは収容人数も多く、比較的チケットが購入しやすいスタジアムなのですが、CL準決勝となると訳が違ってきます。現地のファンが大勢押し寄せ、チケットを購入するのは非常に困難です。しかし、試合当日になるとシーズンチケットホルダーの中で試合に行けない人の席が空くなど、購入チャンスが生まれます。何度もバルサの公式サイトにアクセスし、何とかチケットを購入することができました。

 獲得したチケットを握りしめ、期待を胸にカンプノウに乗り込みます。

試合前のカンプ・ノウ 最上階より

絶望の1stレグ

 リバプールvsバルサの1stレグ、私の座席は1階のゴール裏となりました。もちろん周囲はバルサファンだらけですので、さすがに身の危険を感じてリバプールのシャツは中に着込むだけの留めていました。そして、リバプールがゴールを奪ったとしても、あまり喜びすぎないようにと自分に言い聞かせました。試合開始前のバルサファンによるイノムの大合唱、CLアンセムをかき消す歓声は凄まじかったです。

CLアンセムをかき消すホームサポーター

 この時のリバプールは、フィルミーノが怪我の影響もありベンチスタート、ワイナルドゥムがCFを務めていました。また、先発したケイタも前半で負傷交代してしまうなど、メンバー的に厳しい状況にありました。

 リバプールは前半から、積極的に前線からプレッシャーを仕掛け、決して悪いサッカーをしていたわけではありませんでした。しかし、バルサのプレス回避が非常に巧みで、うまく前進されていたのを覚えています。特にメッシをなかなか捕まえきれず、さすがのパフォーマンスを披露していました。

 そんな中、前半のうちに先制点を奪われてしまいます。私の席は1階のゴール裏だったのですが、目の前でスアレスに決められてしまいました。ゴールを奪った後のスアレスは盛大にゴールパフォーマンスを行っており、古巣へのゴール時にはパフォーマンスをしない選手も多い中で、喜びを爆発させていました。非常にスアレスらしい所ではありますが。

コーナーキックを行うマネ

 前半を0-1で折り返したリバプールですが、後半の開始からはいくつか大きなチャンスも迎えていました。しかし、テア・シュテーゲンの好守に阻まれます。そんな中メッシに2ゴールを奪われてしまいます。特に2点目のフリーキックは圧巻でした。私の座席とは反対側のゴールでしたが、完璧な軌道にボールが飛び、アリソンが触れられずにゴールに吸収されるのが見えました。私の周りが総立ちになって喜ぶ中、私一人は立ち上がることができませんでした。

 結局、試合は0-3で終了しました。サラーのシュートがポストに阻まれるシーンもあったものの、バルセロナにも更なる決定機がありました。アディショナルタイムにデンベレに訪れたデンベレの決定機は、決められていれば決勝進出チームが変わっていたかもしれません。リバプールとしては非常に助かったかと思います。

 しかし、試合後の絶望感は相当なものでした。決して内容が悪かったわけではありませんが、バルサ相手に1stレグで0-3というスコアはダメージが大きく、楽しそうに帰宅するバルサファンたちを横目に、一人静かに帰宅しました。

コーナーキックの守備を行うリバプール

歓喜の2ndレグ

 0-3で敗れた1stレグの1週間後、一抹の期待を込めてチームは2ndレグを迎えます。2ndレグは、当時の友人たちとバルセロナにあるスポーツバーに向かいました。もちろん、会場はバルサファンで溢れかえっています。

2ndレグ バルセロナのバーにて

 前半からバルサに猛烈なプレッシャーをかけるリバプールですが、いきなりオリギが先制点を奪います。しかし、その後が続かず、1-0で前半を終えた時点ではバルサファンにもまだまだ楽観ムードがあったでしょうか。内容的に良くないとはいえ、メッシを始めとした前線のタレントによる一撃があるのも確かです。

 しかし、後半早々に雰囲気が一変します。後半から出てきたワイナルドゥムが一気に2点を奪い、トータルスコアをタイに戻しました。この辺りからバーにいるバルサファンたちからヤジのような言葉も聞こえだします。そして、オリギが逆転の4ゴール目を決めると会場が静まり返りました。席を共にしていたバルサファンの友人の一人は席を立って帰ってしまいます。

 試合終了のホイッスルがなると、数少ないリバプールファンが喜びを表現し、会場全体は静まり返っていました。私の仲間にもリバプールファンがもう一人いたため、喜びを共有しつつ会場を後にしました。バルサ相手に3-0からの逆転劇というのは非常に爽快で、予想もしていなかったものですが、素晴らしいチームの歴史が積み上げられました。

アンフィールドでファンと喜びを共有するリバプール選手陣

まとめ

 今回の記事では、18-19シーズンのCLについて紹介してきました。バルサに大逆転勝利を収めた試合として、リバプールサポーターの脳裏に焼き付いている試合かと思います。カンプノウで1stレグを観戦した際の絶望感は非常に大きなものでした。3点差をひっくり返すというのはなかなかできることはないですしね。

 しかし、リバプールはアンフィールドでやってくれました。2ndレグを見届けてみると、1stレグをカンプノウ見に行って良かったと思えます。リバプールが新たな歴史を作った瞬間に立ち会えたと思うと喜ばしい限りです。

 21-22シーズン、リバプールは再びCLの準決勝に進みました。バルサに勝利した18-19シーズン以来の準決勝です。幸先よく1stレグを2-0で勝利することができましたが、油断は禁物です。ホームのサポーターが力になり、逆転を可能にすることをリバプールファンはよく理解していると思います。 しかし、そんな苦難を跳ねのけて、再び決勝に進むリバプールを期待したいと思います。