22-23シーズンのプレミアリーグがいよいよ8月6日に開幕を迎えます。昨季は史上最強との声もあり、イングランドのチーム史上初の4冠に挑戦したリバプールでしたが、プレミアリーグとUEFAチャンピオンズリーグで惜しくも2位に終わりました。今季は取り逃したタイトルへの再挑戦となります。
長年主力として活躍したサディオ・マネがチームを去り、オリギや南野と言った功労者も退団したリバプールですが、多額の移籍金を払ってダルウィン・ヌニェスを獲得し、ファビオ・カルバーリョ、カルヴィン・ラムジーと言った将来のスター候補も獲得しています。新シーズンへの準備は着々と進んでいるように見えます。
一方で、プレミアリーグのライバルチームたちも充実した夏を過ごしています。昨季優勝争いを繰り広げたマンチェスター・シティを筆頭に、ビッグ6の各チームが充実した選手補強を実行しています。
今回の記事では、22-23シーズンのプレミアリーグ開幕を前に、リバプールの陣容を確認し、22-23シーズンの展望を考察していきます。
22-23シーズンのリバプールの布陣
まずは22-23シーズンのリバプールの布陣を確認します。移籍市場はまだ開いているとは言え、3選手の獲得を終えた後のリバプールの動きは重く、今後新たな選手獲得が行われる可能性は低いでしょう。リーグ開幕前の時点でのメンバーから、22-23シーズンの主力布陣は下記になると予測されます。
ヌニェスが入る以外は基本的には昨シーズンからの継続路線となるでしょう。そのヌニェスにしても、開幕からどの程度主力として活躍できるかは不明瞭です。プレシーズンではライプツィヒ相手に後半だけで4ゴールを奪うなどの活躍を見せましたが、クロップのチームに適応するには時間がかかることが通例です。1月に加入したルイス・ディアスは即座にフィットしましたが、例外と考えられるでしょう。
CFのポジションではフィルミーノが非常に良い状態をプレシーズンで見せており、開幕当初はスタメンとなるのではないでしょうか。負傷の影響で満足にプレシーズンを過ごせていないジョタについても、シーズン開幕後に状態を上げてくれることを期待したいですね。
中盤は昨季と変わらぬメンバー構成となっており、今季もファビーニョ、ヘンダーソン、チアゴの3選手がファーストチョイスとなるでしょう。プレシーズンを見る限りはエリオットも好調で、今季は主力として活躍してくれることを期待したいですね。ナビ・ケイタ、ミルナーについても安定して計算の立つ戦力ですので、今季も出場機会を得られるでしょう。昨季はやや序列を落としたように見える時期もあったジョーンズ、プレシーズンのハムストリングの負傷を負ったチェンバレンには奮起を期待したいです。
そして、ディフェンスラインについても昨季とメンバーに大きな変更はありません。注目は今季のファン・ダイクのパートナーを誰が務めるかでしょうか。昨季は長くマティプが安定したパフォーマンスを披露していましたが、終盤にはコナテが台頭しています。昨季終盤にはパフォーマンスを戻しつつあったゴメスも今夏には契約延長をしており、クロップからの期待を感じさせます。
22-23シーズンのリバプールの戦い方と懸念点
続いて、22-23シーズンのリバプールの戦い方を展望します。基本的にクロップが監督に就任して以降は、リバプールは継続路線を貫いており、今季も同様の戦い方が予測されます。就任当初は大型補強を連続して実施していたものの、18-19シーズンにファビーニョやアリソンらを補強して以降は継続路線でが続いています。
ライバルチームと比較しても近年のリバプールの補強は控えめです。今年はヌニェスに大金を使いましたが、マネの抜けてしまった穴はそれほど大きかったと言うことでしょう。冬に加入したルイス・ディアスも今季が初のフルシーズンですので、新たな戦力の一人と考えられます。昨夏の補強もコナテ1人のみと、近年は堅実な補強戦略を採っています。
ライバルチームが毎年のように派手な補強を繰り返していることもあり、リバプールの下馬評はシーズン開始時点では低いことが多いです。実際に昨季の開幕前も、イングランドの有識者の間ではリバプールの順位予想は3位や4位が多かったと記憶しています。しかし、蓋を開けてみると快進撃と言えるシーズンであり、今季も継続路線を貫くクロップのチームが快進撃を見せてくれると期待したいです。
今季の懸念① 中盤の布陣
一方で、シーズン開幕を控えるリバプールには一抹の懸念事項も存在するのではないでしょうか。その一つが中盤の布陣についてです。クロップが採用する4-3-3においては、中盤の3選手に求められるタスクは非常にタフです。強度の高い守備を90分通して行い、攻撃の組み立てに関与することも求められます。そんな中盤の布陣については、怪我がちの選手も多く一抹の不安を抱えます。
基本的にはチアゴ、ファビーニョ、ヘンダーソンが中盤のファーストチョイスでしょう。しかし、チアゴとヘンダーソンは負傷歴の多い選手であり、その控えとなるケイタやチェンバレンも負傷が多く見られます。また、ミルナーには年齢による稼働率、パフォーマンスレベルの問題が付きまとい、エリオットとジョーンズの若手2人も昨季はファーストチョイスになり切れませんでした。基本的には健康なファビーニョについても、このポジションを代われる選手が、右インサイドハーフのファーストチョイスで、負傷離脱のリスクも高いヘンダーソンと言う状況です。
中盤に抱える選手層や選手のレベルが申し分のないのは昨季の戦いで証明済みです。しかし、やや負傷離脱が多い選手が揃っていることは一抹の不安でしょう。今夏、リバプールはこのポジションを補強するべく、モナコのオーレリエン・チュアメニの獲得に動いていました。しかし、レアル・マドリーとの獲得レースに敗れ、獲得を逃しています。
チュアメニの獲得に失敗したリバプールは、プランBとなる選手は補強しない判断をしているように見えます。あくまでリバプールは、第一候補の選手に大金を支払い、補強の打率を重視する方向性のようです。現状の中盤の戦力のクオリティも十分に高く、中途半場に新たな選手を補強しても投資対効果が合わないと判断しているのでしょう。
そんなリバプールの第一ターゲットとして継続的に取り沙汰されているのは、ドルトムントのジュード・ベリンガムですね。イングランドの若きMF獲得にはかなり高額な移籍金が必要になることが予測されますが、リバプールが獲得を熱望していると報道されています。しかし、ハーランドを今夏放出したドルトムントにベリンガムも売却する意図はなく、リバプールは2023年夏の獲得を目指すとされています。中盤の補強については来夏以降の注目で、今季は現メンバーに期待したいです。
Embed from Getty Images今季の懸念② 負傷者の続出
そして、2つ目の懸念事項は負傷者についてです。21-22シーズンのリバプールは、終盤に負傷離脱者がほとんどいないという状況であり、コンディション管理に成功したシーズンでした。怪我人が少なかったことは昨季の成功要因としてかなり大きかったでしょう。しかし、高いインテンシティを求め続けるクロップのサッカーは負傷者を出すリスクも高く、実際に過去のシーズンでも負傷者に悩まされてきました。今季もどの程度選手のコンディションを管理し、負傷離脱者の少ない状態をキープできるかは、大きなポイントになるでしょう。
仮に主力選手に負傷離脱が相次ぐようであればシーズンを通しての苦戦が予測されます。20-21シーズンはアンフィールドでの6連敗を含め、かなり苦しい時期を過ごしましたが、負傷者続出によるところが大きかったでしょう。センターバックの主力陣が全滅したことに加え、他の選手のコンディションも上がりませんでした。今季も選手のコンディションマネジメントが非常に重要になってくるでしょう。
22-23シーズンのプレシーズンでは、既に数名の選手が負傷を抱えているのが気がかりです。タイとシンガポールで行ったアジアツアーでは、アリソン、ジョタ、チェンバレンが負傷離脱してしまいました。また、今季新加入のカルヴィン・ラムジー、昨季はカップ戦で活躍を見せたカオミン・ケレハーも負傷で満足にプレシーズンを過ごせていません。シーズン開始後には、上記の選手含めて元気にプレーする姿を期待したいです。
22-23シーズンのプレミアリーグ展望
22-23シーズンのリバプールは、移籍市場でマネが退団したとはいえ、後釜としてヌニェスを補強し、更に期待の若手2名も獲得しています。チュアメニの獲得には失敗し、中盤に手を加えられなかったとはいえ、堅調に準備を進めていると言えるでしょう。
基本的には継続路線を貫くクロップのチームは、今季も4-3-3をベースにインテンシティの高いサッカーを体現すると予測されます。昨季はプレミアリーグとCLにはあと一歩のところで届きませんでしたが、2つのタイトルに再挑戦できる力は保持していると思います。しかし、今季もプレミアリーグでライバルとなるチームは派手な補強を展開し、着々と準備を進めています。
最大のライバルであるマンチェスター・シティはドルトムントからアーリング・ハーランドを獲得し、最後のピースを手に入れた感があります。今季も安定した強さを見せてくるでしょう。リュディガーやクリステンセン、ルカクと言った選手を放出したチェルシーも、スターリングやクリバリと言った経験豊かな選手を獲得しています。昨季はピッチ外のゴタゴタもあったチェルシーですが、今季はトゥヘルがピッチ内に集中できる環境で始められそうです。また、昨季途中に就任しチームを4位に導いたコンテのスパーズも脅威でしょう。ペリシッチやリシャルリソン、ビスマと言った選手を獲得しており、補強も順調です。
昨季はCL出場権を獲得できなかったアーセナルとマンチェスター・ユナイテッドも補強には積極的です。アーセナルはアルテタ監督の古巣であるマンチェスター・シティから、ガブリエル・ジェズスとジンチェンコを獲得しています。また、監督交代が行われたユナイテッドは、新監督のテン・ハーグがオランダからリサンドロ・マルティネス、ラマシアを獲得しており、エリクセンとも契約しています。
こうしたライバルチームの補強を並べてみると、リバプールの大金を使った補強はヌニェス1人となっており、下馬評がやや低くなるのも理解できます。しかし、クロップ・リバプールの最大の強みは継続してチームを構築してきている点でしょう。今夏にはサラーとゴメスが契約延長にサインし、更なる継続路線が期待されます。
ライバルチームが多きな補強を刊行しているとは言え、毎年リバプールは強さを見せてきました。今季もマネの退団が大きいとは言え、ヌニェスを加えて基本的には継続路線です。チームには確かな実力を備えたタレントが揃っており、今季もその力を発揮してくれることでしょう。昨季は惜しくも取り逃したプレミアリーグのタイトルを、今季こそは獲得して欲しいものです。