アフリカネーションズカップ2021を分析・考察 アフリカ王者を決める大会の行方に注目

 2022年1月9日から2月6日にかけて、カメルーンでアフリカネーションズカップ2021が開催されます。アフリカ大陸の王者を決める大会ですが、ヨーロッパのクラブシーンへの影響が大きく、話題となっている大会です。アフリカ出身の選手は多くヨーロッパでプレーしており、主力選手に1か月離脱されるクラブチームとしては痛手です。

 リバプールとしても、サラー、マネ、ケイタの3選手の離脱が確定しており、チームへの影響は大きそうです。そんなアフリカネーションズカップですが、日本での大会そのものへの注目度はそれほど高くないでしょうか。しかし、ヨーロッパのトップクラブからも多くの選手が参加する大会であり、ハイレベルな争いが期待されます。

 今回の記事では、そんなアフリカネーションズカップ2022を考察していきたいと思います。

アフリカネーションズカップ2021の基礎情報

アフリカネーションズカップについて

 まずはアフリカネーションズカップの基本的な部分について紹介します。アフリカネーションズカップは、アフリカサッカー連盟(CAF)に加盟する代表チームで争われ、アフリカ王者を決める代表チームの大会となります。他の大陸で行われている、ユーロ、アジアカップ、コパ・アメリカと同じ位置づけの大会ですね。アフリカネーションズカップがユニークな点は、2年に1度開催されるという点にあります。他の大陸で開催される大会は4年に1度ですので、開催期間が短いという特徴があります。

 アフリカネーションズカップは、2013年大会以降は奇数年に開催されています。それ以前は偶数年の開催だったようですが、ワールドカップが偶数年に開催されるため、ワールドカップへの影響を配慮して奇数年の開催となりました。しかし、2021年に開催予定だった大会がコロナウイルスの影響で延期となり、2022年に開催される運びとなっています。

 大会を取り仕切っているのはCAFですが、アフリカらしい点として意思決定が二転三転することがあります。国によっては政情が不安定であったり、国家機関の意思決定もうまく機能していなかったりということもあるアフリカですが、CAFにもアフリカらしさがあるというところでしょうか。報道によっては、2022年の大会も延期が検討されていたとのことでしたが、無事に開催される運びとなりました。

 前回大会であるアフリカネーションズカップ2019は、6月~7月にかけての夏開催でした。これは、ヨーロッパのクラブレベルへの配慮もあってのことだったと思います。例年1月~2月にかけての冬季開催でしたが、現在はヨーロッパでプレーする選手が多く、シーズンの佳境の時期に選手を失うヨーロッパのクラブとの対立は避けられません。そこで、欧州のシーズンに合わせた夏開催が採用されたのですが、2022年に延期された今大会では再び冬季開催となりました。その理由としては、夏開催だと気候が熱すぎて、サッカーをするために適切ではないからということです。

開催地について

 アフリカネーションズカップ2021の開催地はカメルーンとなっています。この開催国をめぐっても様々な議論がありました。カメルーンはもともと2019年の大会を主催する予定でしたが、直前に権利を剥奪となっていました。大会の開催にあたって進めていたスタジアムの建設が遅れていたことや、政情の不安定さを疑問視されてのことだったようです。

 2021年の大会は元々はコートジボワールでの開催が決定していました。しかし、CAFとカメルーン政府の会話により、2019年の代わりに2022年大会をカメルーンで開催することになったようです。そのため、次回の2023年大会をコートジボワールで行い、2023年大会を開催する予定だったギニアは、2025年大会の開催国となります。

 2019年大会に向けてカメルーンでスタジアム建設が必要だった理由として、大会参加国が急遽増えたことがあります。元々は16チームの参加予定でしたが、2019年大会から24チームの参加へと変更になりました。そのため、カメルーンでは新たなスタジアム建設が急務となり、結果的にその建設が間に合わなかったということです。2019年は代替地としてエジプトが選ばれ、大会を開催しています。2019年大会の結果は、優勝がアルジェリア、準優勝がセネガルでした。

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出場チームとグループリーグ

 ここからは、アフリカネーションズカップ2021に参加するチームとグループリーグの組み合わせを見ていきます。参加チームは、開催国のカメルーンを除く23チームが予選によって絞り込まれています。全24チームで抽選を行い、6グループに分けてリーグ戦を行います。各グループの2位チームと、3位チームのうち成績上位の4チームが決勝トーナメントを戦うというレギュレーションになっています。グループリーグの組み合わせと、各国のFIFAランキングは以下の通りです。

 FIFAランキングは2021年12月に発表されたものを参考値として記載しています。前回大会に引き続き、今大会も24か国の参加となっており、より多くの国に可能性が開かれることになりました。参加国の中では、セネガルがFIFAランキングでトップの20位となっており、一番下は151位のガンビアとなっています。

 リバプールファンとして気になる点として、グループBでセネガルとギニアが同居している点があるでしょうか。セネガルにはサディオ・マネ、ギニアにはナビ・ケイタが招集されています。グループBでは、ジンバブエ、マラウイとの対戦ですが、FIFAランキングではセネガル、ギニアが抜けています。特にタレントに恵まれたセネガルにとっては、幸運なグループではないでしょうか。ケイタのギニアにも奮闘を期待し、揃ってのグループ突破を願いたいです。

 また、サラーが所属するエジプト代表はグループDとなっています。こちらは強豪ナイジェリアと同居することとなりました。エジプトとしては、グループリーグ突破は難しくはないでしょうが、決勝トーナメントの対戦相手を考えると、ナイジェリアを上回って首位通過を目指したいところです。

注目4チームを考察

 ここからは、筆者が注目しているチームをピックアップして考察していきたいと思います。ここでは、セネガル、モロッコ、エジプト、アルジェリアを取り上げます。いずれも中心選手が欧州で活躍しており、チームとしての質も非常に高いです。他にも有力なチームは存在しますが、この4チームは今大会の主役候補ではないでしょうか。

セネガル代表

 まずはリバプールのサディオ・マネも選出されているセネガル代表です。今大会に参加する国の中では最もFIFAランキングが高く、欧州のトップレベルで活躍する選手を多数擁していることからも、優勝候補の筆頭ではないかと思います。今大会に向けた招集メンバーを見ても、全選手が欧州のクラブチームでプレーしています。

 主なプレイヤーとしては、GKのメンディ(チェルシー)、DFだとクリバリ(ナポリ)、ディアロ(PSG)、ブナ・サール(バイエルン)、クヤテ(クリスタル・パレス)、バロ・トゥーレ(ミラン)、MFにメンディ(レスター)、イドリッサ・ゲイェ(PSG)、FWにマネ(リバプール)、イスマイラ・サール(ワトフォード)、ケイタ・バルデ(カリアリ)といったところでしょうか。本当にトップクラスのタレントを揃えていることがわかります。

 旧宗主国であるフランスとの結びつきが強く、フランスでプレーしている選手が多いこともセネガルの特徴でしょうか。歴史的背景もあって、セネガルではフランス語が公用語としてあるので選手はプレーしやすいでしょう。また、クリバリをはじめとして、セネガルにルーツを持つものの、フランスで生まれ育った選手が多いことも特徴です。そのような背景もあり、アフリカで随一のタレント力を誇るチームです。

 また、このチームを率いているのは2015年に就任したアリウ・シセです。自身もセネガル代表で活躍したシセ監督は、長期的にチームを率いて結果を残しています。2018年のロシアワールドカップへの出場権を獲得し、セネガルに久々のワールドカップ出場をもたらします。警告数の差という僅差で日本に敗れ、3位でグループリーグ敗退となってしまいましたが、初戦でポーランドを破るなど、セネガル代表の評価を高めました。また、前回大会であるアフリカネーションズカップ2019では準優勝という結果を残しており、今大会では優勝への期待が高まります。

モロッコ代表

 続く注目チームはモロッコ代表です。モロッコ代表はアフリカの中では、セネガルに次いでFIFAランキングが2番目に高いチームとなっています。現在のモロッコ代表を率いるのは、元日本代表監督のヴァヒド・ハリルホジッチ監督であり、日本でも知名度が高いのではないでしょうか。そんなモロッコのアフリカネーションズカップに臨むメンバーは下記のようになっています。

 モロッコ代表もセネガル代表と同様、ヨーロッパでプレーしている選手が非常に多いです。モロッコリーグでプレーしているGKのズニティを除き、全選手が欧州のクラブに所属しています。主な選手としては、セビージャの守護神であるGKのブヌ、PSGでプレーしているアクラフ・ハキミ、ウォルバーハンプトンのロマン・サイス、フィオレンティーナのアムラバト、セビージャのムニルと言ったところでしょうか。

 チェルシーでプレーするジヤシュもモロッコの選手ですが、先の代表戦時にハリルホジッチ監督によってチームを追放され、今回も選出されることはありませんでした。元々は中心選手としてプレーしていたジヤシュでしたが、代表チームでの振る舞いがふさわしくないとして、ハリルホジッチ監督の怒りを買ってしまいました。

 また、今回のアフリカネーションズカップで初招集を受けた、バルセロナでプレーするアブデ・エザルズリが招集を拒否したことも話題になっています。今シーズン出番を増やしている若手ですが、将来的にスペイン代表を目指すために、今回のモロッコからの招集は拒否したとのことです。

 モロッコ代表には、ヨーロッパのトップクラスで活躍するような選手はおらず、タレント力ではややセネガル代表に劣る印象はあるものの、非常に優れたチームであることは間違いありません。現在行われている、ワールドカップのアフリカ予選では全勝中であり、好調を維持しています。4年前のロシアワールドカップでも、スペイン、ポルトガル、イランと同居したグループで勝利できずに終わったものの、非常に印象的なポゼッションフットボールを展開していました。ハリルホジッチという、勝利にこだわるサッカーを展開できる監督を迎え、どのような戦いを見せてくれるのか、非常に楽しみです。

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エジプト代表

 次にエジプト代表について見ていきます。FIFAランキングでは他チームと比較してもやや低めの45位につけるエジプトですが、今季好調を維持しているモハメド・サラーが率いるチームです。そんなエジプト代表の本大会に向けた招集メンバーは以下の通りです。

 エジプト代表の選手には、欧州でプレーしている選手は比較的少なく、国内リーグでプレーしている選手が多く招集されています。エジプトの国内リーグである、エジプト・プレミアリーグはアフリカ大陸でも屈指の競争力を誇っており、その1位と2位を走るアル・アハリとザマレクから非常に多くの選手が招集されています。国内組をベースとしたチームに、リバプールで得点を量産しているサラーや、アーセナルのエルネニー、アストン・ヴィラのトレゼゲといった欧州組を加えたチーム構成となります。

 チームを率いるのはカルロス・ケイロス監督です。ポルトガル人の監督で、ポルトガル、イラン、南アフリカなどの各国代表監督や、名古屋グランパスやレアル・マドリーなどのクラブチームを率いた経験のある人物です。実績としては、イラン代表を率いて非常に戦術的で優れたチームを作り上げたことが印象的でしょうか。イラン代表をアジアで屈指のチームに仕上げ、ワールドカップの舞台でもモロッコ相手に歴史的勝利を掴みました。

 カルロス・ケイロスがエジプト代表の監督に就任したのは2021年9月であり、今大会がエジプトでの初のメジャー大会となります。ソリッドな守備をベースに鋭いカウンターサッカーを得意とする印象の監督ですが、モハメド・サラーという世界屈指のアタッカーをどのようにチームに組み込むか、個人的に非常に注目しているチームです。

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アルジェリア代表

 最後に、前回大会の覇者であるアルジェリア代表です。アルジェリア代表はFIFAランキングでは32位と、セネガル、モロッコに次いでアフリカでは高い順位につけています。アルジェリアは伝統的に、テクニックに優れ、突破力のあるアタッカーを輩出している印象がありますが、今大会でも豊かなタレントを攻撃陣に揃えています。以下が今大会に招集されているメンバーとなります。

 アルジェリア代表のメンバーは、欧州でプレーする選手と中東でプレーする選手が中心となっています。特にサウジアラビアやカタールといった、中東のリーグでプレーしている選手が目立ちます。また、やはりアタッカーには非常に優れたアタッカーを揃えているところはアルジェリアらしい特徴でしょうか。

 マンチェスターシティのマフレズを筆頭に、ウェストハムのベンラーマ、ナポリのウナス、リヨンのスリマニなど、欧州で活躍するアタッカーを揃えています。足元の技術と突破力に優れた選手が非常に多く、魅力的なサッカーを展開するのではないでしょうか。

 アルジェリアがグループリーグで対戦するのは、シエラレオネ、赤道ギニア、コートジボワールの3チームです。コートジボワールは難敵ですが、実力的にはアルジェリアのグループ突破は順当でしょう。前回王者のアルジェリア代表は、今大会ではどのような戦いを見せてくれるでしょうか。

まとめ

 2022ね年1月9日にカメルーンで開幕するアフリカネーションズカップ。リバプールをはじめ、選手を送り出す側である欧州のクラブチームにとっては痛手ですが、フットボールファンとしては非常に楽しみでもあります。アフリカ各国のプレイヤーレベルやチームの質は上がり続けており、ワールドクラスの選手も多く大会に参加します。

 筆者としては、今回の記事で取り上げたセネガルを筆頭に、モロッコやアルジェリア、さらにはナイジェリアといったチームが力を持っていると感じています。そして、現在では世界最高の選手に数えられる、モハメド・サラーを擁するエジプトも今大会の主役になり得るでしょう。欧州のクラブシーンのみでではなく、1月はアフリカネーションズカップにも注目したいところです。