ベンフィカ分析 CLベスト8進出のチームの成績と戦い方を振り返る

 21-22シーズンのチャンピオンズリーグもベスト8まで進みました。対戦相手を決める抽選が行われ、リバプールはベスト8でベンフィカと対戦することが決まっています。

 ベンフィカと言えばポルトガル3強の1チームで、たくさんのスタープレイヤーを輩出してきたチームです。 今季のチャンピオンズリーグでは、バルセロナ、アヤックスを撃破するなどしてベスト8まで進出しています。

 今回の記事では、ベンフィカの今季これまでの戦いと、チャンピオンズリーグ1回戦のアヤックス戦を振り返り、ベスト8でリバプールの対戦相手となるチームについて分析していきます。

ベンフィカの今季ここまで

ポルトガルリーグ

 まず、ベンフィカの今季の戦いぶりを振り返ります。ベンフィカはポルトガルリーグで現在3位につけています。ポルトガルリーグは、ポルト、ベンフィカ、スポルティングの3強リーグであり、3位という順位はベンフィカにとって最低限と言えるでしょう。首位のポルトとは3月時点で12ポイントの勝ち点差があり、優勝を狙うには難しいポジションと言えるでしょう。下記は、3月末時点におけるポルトガルリーグ、リーガ・プリメイラの順位テーブルになります。

順位チーム名試合数勝点
1ポルト2773
2スポルティング2767
3ベンフィカ2761
4ブラガ2749
5ジル・ヴィセンテ2746
リーガ・プリメイラの順位表(2022年3月末時点)

 首位ポルトとは勝点12差の3位につけるベンフィカは、2位スポルティングにも6ポイント離されています。しかし、下を見ると4位以下には大きく差をつけているところが3強のポルトガルリーグらしいですね。

 また、ポルトガルには国内カップ戦が2つありますが、現時点でベンフィカは共に敗退しています。1つ目の国内カップ戦である、タッサ・デ・リーガでは決勝まで進出していますが、スポルティングに1-2で敗れています。

 そして、2つ目の国内カップ戦である、タッサ・デ・ポルトガルにおいては、ベスト16でポルトに0-3で敗れています。2021年12月に行われたこの試合で、ルイス・ディアスは先発でプレーし、1アシストを記録しています。

チャンピオンズリーグ

 リーグ戦では優勝を狙うには厳しい位置につけており、2つの国内カップ戦では敗退しているベンフィカですが、チャンピオンズリーグでは好成績を残していると言えるでしょう。バイエルンとバルセロナと同居したグループを2位で通過すると、決勝トーナメント1回戦でもアヤックスを破ってベスト8に進出しています。

 今季のアヤックスは非常に評価が高いチームで、オランダリーグやチャンピオンズリーグのグループステージでは盤石の強さを見せていました。そんなチームを降してのベスト8進出ということで、勢いが感じられます。以下が、ベンフィカの今季のチャンピオンズリーグの成績となります。

ラウンド対戦相手スコア結果ホーム&アウェイ
プレーオフスパルタク2-0アウェイ
プレーオフスパルタク2-0ホーム
プレーオフPSV2-1ホーム
プレーオフPSV0-0アウェイ
グループリーグディナモ・キエフ0-0アウェイ
グループリーグバルセロナ3-0ホーム
グループリーグバイエルン0-4×ホーム
グループリーグバイエルン2-5×アウェイ
グループリーグバルセロナ0-0アウェイ
グループリーグディナモ・キエフ2-0ホーム
決勝T1回戦アヤックス2-2ホーム
決勝T1回戦アヤックス1-0アウェイ
ベンフィカ チャンピオンズリーグのここまでの成績

 今季のベンフィカはプレーオフからの参戦となっています。プレーオフでスパルタクとPSVを退けると、グループリーグではバルセロナ相手に1勝1分という成績で競り勝っています。クーマン監督率いる不調のバルサが相手だったとは言え、素晴らしい結果と言えるでしょう。バイエルン相手には2度の大敗を喫していますが、決勝トーナメントではアヤックスを沈めています。

ベンフィカのメンバー

 ここからは、ベンフィカの具体的な戦い方を見ていきます。ベンフィカを率いるのは、ネルソン・ヴェリッシモ監督です。ヴェリッシモは、昨年の12月にベンフィカBから昇格する形で監督に就任し、チームの指揮を執っています。前監督のジョルジェ・ジェズスが解任されたことによる内部昇格でした。

 そんなヴェリッシモ監督は、アヤックス戦の2試合で同じスターティングイレブンを選択しています。アヤックス戦のスタメンは以下の通りでした。

ベンフィカ アヤックス戦のスタメン

 こう見るとプレミアリーグファン的には懐かしい名前が多いですね。オタメンディとフェルトンゲンは長くプレミアリーグで活躍していたディフェンダーですし、ボランチを務めるターラブトも、2011年~2013年までQPRでプレミアリーグを戦っていました。また、トゥヘル時代のドルトムントで活躍していたユリアン・ヴァイグルも在籍しています。アヤックス戦では出番がありませんでしたが、過去にインテルやウェストハムに在籍していたジョアン・マリオもベンチに控えていました。

ベンフィカの基本戦術

 そんなベンフィカですが、アヤックス戦を見る限りは慎重な戦い方を選択するチームという印象でした。アヤックスを格上と捉え、リスペクトを持って戦い方を選択したのかもしれませんが、ホームで迎えた1stレグもやや守備的な入り方をしていました。しかし、攻撃のスイッチが入ると破壊力のあるチームです。攻撃には人数をかけ、タレント力を活かしてアヤックスゴールを脅かしていました。

 ベースとなるフォーメーションは4-4-2で、しっかりと守備ブロックを構築することを重視します。非ボール保持の局面では、前線からのプレスは仕掛けず、4-4-2のブロックを組んで相手を待ち構えます。トップ下的な振る舞いをするG・ラモスが相手のアンカーを監視し、エヴェルトンとラファ・シウバの両サイドハーフもラインを形成して守備のタスクをこなします。

 攻撃面においては、後方からのビルドアップを試みる姿勢は見られました。CBが幅を取り、SBが高い位置に進出して前進を狙います。しかし、ハイプレスを受けると縦への長いボールも使用します。最前線のヌニェスは、ボールを収める強さがある選手です。サイドに流れて起点になることも多く、ヌニェスに預けて攻撃に転じる形は何度も見られました。

 一度攻撃のスイッチが入ると相手ゴールへの圧力は強まります。スペースがある状態では、素早い縦への攻撃がチームに浸透しており、敵陣に侵入するとSBも積極的に攻撃参加します。最前線で起点になれるヌニェス、サイドを個人で打開できるエヴェルトンとラファ・シウバなど、攻撃的なタレントを揃えており、攻撃力も高いチームです。一度敵陣内に侵入すると、G・ラモス、ターラブトに加え、両SBも攻め上がりを見せ、積極的な振る舞いをしていました。

Embed from Getty Images

アヤックス戦 1stレグ

 ベンフィカのホームで行われた1stレグは2-2のドローに終わっています。先述の通り、慎重な戦い方を選択したベンフィカは、ホームと言えども4-4-2のブロックを低めの位置に設定します。アヤックスに何度かチャンスを作られたものの、崩されるシーンは多くなく、堅固な守備ブロックを維持できていました。

 ベンフィカが苦しんでいたのは、アヤックスのハイプレスです。1失点目は、ハイプレスを受けて自陣でボールロストしたところから生まれました。ベンフィカは後方からのビルドアップを試みますが、ハイプレスを受けた際に上手く脱出できずにいました。SBを逃げ道にしようとするのですが、逆にプレスの狙いどころにされ、前線へのロングボールも多くなっていました。

 とは言え、ホームのベンフィカも攻撃の時間帯は少なくありません。特に後半は、ヌニェスが起点となって縦への素早い攻撃が見られます。エヴェルトン、ラファ・シウバの2人のサイドアタッカーは、テクニックとスピードに優れ、何度もチャンスを生み出していました。敵陣に押し込んだ際には両サイドハーフは中央寄りのポジションを取り、大外はサイドバックがカバーします。中盤のターラブトが前線に抜け出すシーンもあり、攻撃面は非常にアグレッシブでした。

Embed from Getty Images

アヤックス戦 2ndレグ

 2sdレグはアウェイと言うこともあり、ベンフィカのゲームプランはより慎重なものに見えました。4-4-2のブロックを構築することを徹底し、低く構えてアヤックスの攻撃を受け止めます。ボールを奪った直後は、縦への速い攻撃をヌニェス、ゴンサロ・ラモス、エヴェルトン、ラファ・シウバが狙っていました。

 1stレグに比べてアヤックスに押し込まれる時間も長くなります。アヤックスはボール保持を大切にし、最後の局面は細かい連携を使用して崩すことのできるチームです。しかし、ベンフィカのソリッドな守備ブロックは、決定的な局面を多く作らせることはありませんでした。ペナルティーエリアに侵入されるシーンは散見されるものの、最後の局面で体を張り、90分を通して守り続けました。

 ベンフィカの選手は、全員が守備のタスクをこなし、チームのために戦うことのできる選手たちです。2トップの1角を担い、トップ下的に振る舞うゴンサロ・ラモスは非常にハードワーカーで、献身的なプレスバックをこなします。また、攻撃力が武器である両サイドのエヴェルトンとラファ・シウバも守備時はサボることなくブロックを形成していました。

 そして、多くの時間を守備に費やし、アヤックスの攻撃を耐え抜いたベンフィカはゲームの終盤に得点に成功します。サイドのフリーキックからヌニェスが頭で合わせてのゴールでした。2ndレグのこの試合、ベンフィカはそれまでにもコーナーキックからチャンスを迎えており、1stレグのベンフィカの1点目もコーナーキックの流れからでした。

 試合の終盤にセットプレーから1点を奪ったベンフィカがアウェイで1-0で勝利し、2戦合計3-2で勝ち抜けを決めました。1stレグ、2ndレグを通じてベンフィカのセットプレーは脅威になっており、チームの武器になっていました。 

Embed from Getty Images

まとめ

 ここまで、今季のここまでの成績とチャンピオンズリーグのアヤックス戦から、ベンフィカと言うチームについて詳しく見てきました。ベンフィカは、4-4-2で構築される堅固なブロック守備をベースに、ヌニェスや両サイドのエヴェルトン、ラファ・シウバが起点となった縦に速い攻撃が特徴のチームです。

 そんなベンフィカは、チャンピオンズリーグのベスト8でリバプールと対戦します。地力で勝るリバプールに対し、ベンフィカはアヤックス戦で見せたものと同様の戦い方で臨むことが想定されます。リバプールとしては、堅固な守備ブロックを攻略できるか、カウンターやセットプレーの脅威にどのように対処するか、が重要なポイントになるでしょう。

 今季のベンフィカは、バイエルンには大敗を喫したものの、バルセロナやアヤックスに競り勝ってきたチームです。リバプールとの準々決勝も見ごたえのあるゲームになるのではないでしょうか。