今季序盤の大一番 チェルシーvsマンチェスターシティ

 今季、確実にプレミアリーグの上位争いに絡んできそうなのがチェルシー、マンチェスターシティの2チームでしょう。昨季から好成績を残し、非常に高度な試合を続けている2チームです。プレミアリーグ第6節、この両チームがスタンフォードブリッジで激突しました。結果は0-1でアウェイのシティの勝利。リーグ戦の今後の上位争いに影響を与えかねない、序盤の大一番を振り返ってみます。

功のシティと守のチェルシー

 試合は、シティがボールを保持し、チェルシーが守るという時間の長い展開でした。お互いのチームとしての特徴を前面に押し出した展開ですが、私としてはチェルシーのボール保持が予想以上に少なかったという印象でした。ホームで戦うチェルシーとしては、もう少し自分たちで試合を作りたかったでしょうか。シティが非常にアグレッシブなプレスを慣行し、チェルシーのボール保持を許さない展開でした。

 ゲームを支配しているのはずっとシティでしたが、最後のチェルシー守備を崩せません。しかし、53分にゴール前の混戦からジェズスがゴールをこじ開けます。このようなレベルの高いゲームでは、相手の守備をきれいに攻略することは難しく、混戦から泥臭く押し込めるかが結果を左右することが多いです。そんな時、ボールを保持する時間が長く、相手を押し込めている側のチームがやはり優位になるのでしょう。泥臭い1点の確率を高めるためにも、ボール保持は有効な手段です。失点後はチェルシーもバランスを崩して前に出ます。お互いにゴールに迫るシーンが増える、オープンな展開となりましたが、最後までシティがリードを維持しました。

 前半からこの試合で多く見られたのは、シティがボールを保持し、チェルシーがブロックを敷いて守るという展開です。特に前半、シティがゲームをコントロールしている時間が非常に長かったですが、チェルシーの鉄壁の守備には苦戦していました。

シティのボール保持vsチェルシーの守備ブロック

 このゲームで最も特徴的だったのは、シティのボール保持による攻撃を、チェルシーの堅固な守備ブロックが守る、という構図です。ここでは、両者の攻撃と守備を掘り下げます。

 シティのボール保持の一番の特徴は、チームとして非常に高度に整備されているポジショニングにあります。ざっくりとした役割としては、グリーリッシュとジェズスが幅を取り、ディアス、ラポルト、ロドリの三角形でビルドアップをスタート、カンセロ、ウォーカーの2人はビルドアップの推進役です。ベルナウド・シウバは中盤でビルドアップをサポートすることが多く、デブライネとフォデンが、相手の急所でのボールを受けることを狙います。シティはこのような選手の役割でピッチを広く使ってボールを動かし、相手の配置の崩れを誘発して攻撃を突き刺すのが非常にうまいチームです。

 この試合でも、バランスの取れたポジショニングでパスを回しながらボールを支配し、相手ディフェンスのポジショニングを崩そうとするシーンが見受けられました。デブライネやフォデンが相手のディフェンスをつり出し、裏のスペースを創出したり、グリーリッシュとカンセロの連携でチェルシーディフェンスのバランスを崩そうとする場面が散見されました。しかし、チェルシー守備ブロックを最後まで崩しきるには至りませんでした。

 そんなシティのボール保持による攻撃を受け止め続けたのがチェルシーの守備ブロックです。チェルシーの守備ブロックは、リバプール戦でも真価を発揮していた通り、欧州トップクラスです。チェルシーの守備の特徴としては、中央の密度が高く揺さぶられてもバランスを崩さないこと、個人の守備能力の高さ、の2点でしょうか。

 チェルシーは相手の攻撃を受け止める際、ディフェンスラインを5人で構成します。そしてその前に中盤の3枚を並べ、5-3のブロックを敷く体制です。この中央に密度の高い2ラインブロックは、シティの揺さぶりに簡単には動じません。5バックでピッチの横幅を5人でカバーできるため、横への揺さぶりには非常に強さを発揮します。また、シティの特徴的なボールを縦に出し入れしながらディフェンスをつり出し、バランスを崩そうとする試みにも正確に対応します。中盤3人がポジショニングによってデブライネ、フォデンへのパスコースを遮断し、中盤に落ちてボールを引き出す動きにはセンターバックがついて行って潰します。シティにスペースを与えず、守備のバランスを保ち続けたチェルシーの組織的なディフェンスでした。

 また、チェルシー守備陣の個人の能力の高さが組織的な守備力の高さを支えています。特にリュディガー、チアゴ・シウバは対人能力が非常に高い選手です。また、ウィングバックの選手も守備を苦手としていません。カンテとコバチッチはポジショニングによってパスコースを遮断するバランス感覚に優れ、カンテのボール奪取能力はトップレベルです。ジョルジーニョのカバー能力も非常に効いている印象でした。元々優れた守備能力を持っていた選手の集団に組織としての守備能力を与えたトゥヘルの手腕はさすがというところでしょうか。 

勝負を分けたのはシティの守備

 非常に白熱するバトルを見せてくれたシティの攻撃vsチェルシーの守備という構図ですが、試合の結果に大きな影響を与えたのはシティの守備の部分でしょうか。この試合、シティはボールを失うと非常に素早く激しいプレスをチェルシーにかけ続けていました。ペップはオールコートマンツーマンに近い守備の方法を選択し、チェルシーにボール保持の自由を与えません。この守備を試合を通して維持し、チェルシーが攻撃の形を作れなかったことが、この試合の結果を分けたポイントとなったでしょうか。

 今季、好調を維持するチーム同士の戦い、勝点3を手にしたのはマンチェスターシティでした。しかし、シーズはまだ序盤です。今後も今季のシティとチェルシーには注目です。