【CL決勝】リバプールvsレアル・マドリーの戦いを展望

 21-22シーズンの欧州王者を決定するチャンピオンズリーグ(以下CL)もいよいよ決勝戦を迎えます。対戦カードは、イングランドのリバプールとスペインのレアル・マドリーに決定しました。プレミアリーグで激烈な優勝争いを繰り広げたリバプールと、ラ・リーガを制したレアル・マドリーの戦いは、まさに欧州最強を決めるにふさわしいカードでしょう。

 今回の記事では、リバプールvsレアル・マドリーのCL決勝の展望について紹介していきます。

リバプール 今季ここまでの成績

 最初に、両チームの今季ここまでの戦いを振り返ります。リバプールは、前人未到の4冠制覇に挑戦したシーズンでした。リーグ戦の最終日まで4冠の可能性を残しており、非常に充実したシーズンを送っています。

 プレミアリーグでは、最終節までマンチェスターシティと勝点1差をキープし、白熱した優勝争いを繰り広げました。最終節では、マンチェスターシティがアストンヴィラ相手に大逆転勝利を収めたことにより、優勝こそ逃しましたが、シーズンを通して安定した戦いを披露していました。

 また、イングランドにはリーグカップ、FAカップという2つのカップ戦が存在していますが、共に決勝まで勝ち上がり、優勝を決めています。2月に行われたリーグカップ決勝では、11人目はでもつれたPK戦の末にチェルシーを降して優勝しています。

 そして、FA杯でも決勝戦ではチェルシーと激突しました。再びスコアレスドローとなった試合は、またしてもPK戦の末にリバプールが勝利しています。

 そんなリバプールですが、今季のCLの勝ち上がりも堅調なものでした。下記は、リバプールのCLにおける決勝までの試合結果です。

ラウンド対戦相手スコア結果ホーム&アウェイ
グループリーグACミラン3-2ホーム
グループリーグポルト5-1アウェイ
グループリーグアトレティコ・マドリー3-2アウェイ
グループリーグアトレティコ・マドリー2-0ホーム
グループリーグポルト2-0ホーム
グループリーグACミラン2-1アウェイ
決勝T1回戦インテル2-0アウェイ
決勝T1回戦インテル0-1×ホーム
ベスト8ベンフィカ3-1アウェイ
ベスト8ベンフィカ3-3ホーム
ベスト4ビジャレアル2-0ホーム
ベスト4ビジャレアル3-2アウェイ
リバプール 21-22シーズンCL決勝までの道のり

 ミラン、アトレティコ・マドリー、ポルトと同居する厳しいグループリーグとなったリバプールですが、見事に全勝でグループ突破を決めています。続く決勝トーナメント1回戦ではインテルと対戦し、2試合通して苦しい時間も長かったですが、何とか勝利しました。CLの戦いではこのインテル戦が最も厳しい戦いだったかと思います。

 続くベスト8ではベンフィカ、ベスト4ではビジャレアルと対戦しています。CLという舞台においては相手に少し恵まれた感もありましたが、共に難敵でした。特にビジャレアルとの準決勝では、アウェイでの2ndレグで大変な苦戦を強いられます。一時はホームで奪った2点のリードをタイに戻されましたが、後半に息を吹き返したリバプールが逆に3得点を奪いました。結果、パリで行われる決勝戦への切符を手にしています。

レアル・マドリー 今季ここまでの成績

 対するレアル・マドリーも、今季はラ・リーガで優勝を早々と決めるなど、良好な結果を残しています。バルセロナやアトレティコ・マドリーと言った、普段ならタイトル争いを繰り広げるライバルチームが今季は調子を崩しており、ラ・リーガでは独走状態での優勝となりました。レアル・マドリーでラ・リーガ制覇を成し遂げたアンチェロッティ監督は、史上初の欧州5大リーグを全て制した指揮官となっています。

 一方で、国内カップ戦である、コパ・デル・レイでは早々に敗れてしまい、カップ戦はCLのみという状況が続きました。CLの舞台での戦いはさすがで、しっかりと決勝戦まで勝ち上がっています。以下が、レアル・マドリーのCLにおける準決勝までの対戦相手と結果になります。

ラウンド対戦相手スコア結果ホーム&アウェイ
グループリーグインテル1-0アウェイ
グループリーグシェリフ0-1×ホーム
グループリーグシャフタール5-0アウェイ
グループリーグシャフタール2-1ホーム
グループリーグシェリフ3-0アウェイ
グループリーグインテル2-0ホーム
決勝T1回戦パリ・サンジェルマン0-1×アウェイ
決勝T1回戦パリ・サンジェルマン3-1ホーム
ベスト8チェルシー3-1アウェイ
ベスト8チェルシー2-3×ホーム
ベスト4マンチェスター・シティ3-4×アウェイ
ベスト4マンチェスター・シティ3-1ホーム
レアル・マドリー 21-22シーズンCL決勝までの道のり

 グループリーグでは5勝1敗と順調な成績で勝ち抜けたレアル・マドリーでしたが、第2節にホームでシェリフに敗れた際には少しヒヤッとしたかと思います。モルドバからCL本大会に進んできたシェリフは、グループリーグ第1節にシャフタールを破るサプライズを起こしていました。しかし、まさかサンチャゴ・ベルナベウでレアル・マドリーを破るとは、想像が難しかったでしょう。

 シェリフ相手にヒヤッとする黒星を喫したものの、その後の戦いは堅調でした。リバプールを決勝トーナメントで苦しめたインテル相手の2勝も含め、5勝1敗の成績を収め、首位でグループリーグを突破しています。

 そして、決勝トーナメントでは強豪チームとの対戦が続き、3試合全て逆転勝ちという激戦を勝ち抜いています。1回戦のPSG戦では、アウェイの初戦を内容的にも完敗の0-1で落とすと、ホームの2ndレグでも早々に先制を許します。しかし、そこからベンゼマの怒涛のハットトリックで逆転し、圧巻の勝利を挙げました。

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 続く準々決勝は、これまたベンゼマのハットトリックでアウェイでの初戦を3-1でものにしましたが、ホームでの2ndレグでチェルシーの反撃を浴びます。75分までに0-3とされ、トータルスコアでも3-4と逆転を許してしまいました。しかし、80分にロドリゴがゴールを決めてトータルスコアをタイに戻し、延長戦に持ち込むと、延長戦ではベンゼマが決勝ゴールを奪っています。

 決勝進出を決めたマンチェスター・シティ戦の逆転劇も圧巻でした。アウェイでの初戦は内容的に押されつつも、何とか3-4の打ち合いで終え、1点差でホームに試合を持ち帰りました。しかし、2ndレグでもペップ・シティに上手く試合を進められると、73分に被弾します。完全に試合は終わったかと思いましたが、CL仕様のベルナベウは凄まじかったです。90分と91分にロドリゴが2ゴールを奪い、延長戦に持ち込んでしまいました。そして、延長戦ではベンゼマのPKが決まり、見事に逆転で決勝戦への切符を手にしています。

21-22シーズン リバプールの特徴

 ここからは、今季の両チームの具体的な戦い方を見ていきます。クロップ監督が継続してチームを成熟させてきたリバプールは、代名詞であるハイプレスと素早くゴールに迫る攻撃に加え、ボールを保持して試合を進められるチームになっています。

 様々な形のビルドアップやフィニッシュの形を持っており、守備側のチームに的を絞らせません。ゴール前に引かれた相手の攻略は長年のクロップの課題でしたが、今季のリバプールは苦にしていないように感じます。今季のリバプールの詳しい戦術は下記の記事で紹介しています。

 ハイプレス、様々な形を持ったビルドアップとファイナルサードの崩し、厚い選手層と、今季のリバプールは隙のないチームとして仕上がっています。4冠に近づいたチームは、さすがの成熟度と言えるでしょう。

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21-22シーズン レアル・マドリーの特徴

 一方のレアル・マドリーも、リバプールに劣らず万能型のチームと言えるでしょう。ポゼッションやハイプレスに圧倒的な特徴のあるチームではなく、非常に能力の高い選手を各ポジションに擁し、ポゼッション、ブロック守備、カウンターと何でも高いレベルでこなしてしまうチームです。

 基本的には4-3-3のフォーメーションを使用することが多く、中盤の3人は長く変わっていません。モドリッチ、トニ・クロースは抜群にプレス回避能力が高く、相手の激しいプレッシングに晒されても、的確にスペースへとボールを逃します。また、アンカーの位置には守備能力の高いカゼミーロを配置し、チームのバランスを保っています。この3選手を揃えた中盤の安定感は衰えないですね。

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 そして、今季のレアル・マドリーの特徴は何といっても攻撃陣でしょう。特に、ヴィニシウスとベンゼマは驚異的なホットラインを構築しています。CL決勝トーナメントでのベンゼマの決定力は凄まじく、難しい態勢からのゴールを何度も沈めてきました。また、ヴィニシウスはどの対戦チームに対しても個人の突破力で脅威を与えており、対戦チームとしてはヴィニシウス対策が一つの焦点となっていました。アウェイでのマンチェスター・シティ戦では、ベンゼマの決定力とヴィニシウスの突破力が存分に発揮され、劣勢な状態でも3-4の接戦に持ち込むことができました。

 CLでの対強豪チームとの対戦を見ていると、アンチェロッティのチームは守備ブロックを敷いて守る時間を増やすこともありました。そんな中でも常にヴィニシウスとベンゼマによるロングカウンターがあり、決して守備的な戦い方ではありません。

 また、万能型のチームとしてポゼッションでゲームを組み立てる展開にもなり得ます。中央のモドリッチ、クロースを中心にゲームを組み立てることが得意な選手も揃っており、非常に多彩な戦い方を持っているチームです。

決勝戦の展望

 リバプールとレアル・マドリーが対戦する決勝戦はどのような戦いになるでしょうか。ここからは、両チームのメンバーや、試合の展開を展望してみます。シーズンの最後の試合となるCL決勝には、両チーム共に考え得るベストの布陣を用意してくるでしょう。決勝までのCLのゲーム等を見るに、以下のような布陣になるのではないかと予測します。

リバプールvsレアル・マドリー 予想フォーメーション

 両チーム共に、いくつかのポジションでは他に起用される可能性のある選手はいるものの、コンディションが良ければ上記の布陣になるのではと思います。共に4-3-3のフォーメーションで戦っているチームで、特に相手によって戦い方を変えるわけでもありません。

注目ポイント① レアル・マドリーのロングカウンターとリバプールの対応

 リバプールはいつも通り、相手のポゼッションに対して強烈なプレッシングを仕掛け、ボール奪取からのカウンターを狙うでしょう。カウンターを出せない際にも、しっかりとボールを保持して相手を押し込み、ゴールを狙う戦い方をすることが予想されます。

 対するレアル・マドリーですが、リバプールと比較してブロック守備を行うことも厭わないチームです。リバプールがボール保持を行い、レアル・マドリーがブロックを敷く時間帯は想定されるでしょう。レアル・マドリーとしては、守備ブロックを敷く展開から強烈なロングカウンターは狙いの一つです。ベンゼマとヴィニシウスを起点としたカウンターは常にゴールを脅かすことができ、守備ブロックを敷いて自陣に相手を引き入れる展開は逆にカウンターのチャンスにもなり得ます。

 リバプールがレアル・マドリーのカウンターにどのように対応するかは見どころのひとつでしょう。第一の狙いとしては、カウンタープレスによってカウンターの芽を摘んでしまうことが目標です。しかし、レアル・マドリーのプレス回避の上手さを考えると、90分間通してカウンターの芽を封じ続けることは難しく、ロングカウンターを浴びる場面は考えられます。

 リバプールのセンターバックコンビは非常に足も速く、ファビーニョを加えた後ろの3枚のカウンター対応は非常に秀逸です。しかし、ヴィニシウスを中心としたカウンターは強力で、CLで対戦した強豪チームは、ヴィニシウス対策を施していました。クロップが起用する選手を変えるといった特別な対策を用意することは考えづらいですが、何かしたの対応策は用意するかもしれません。レアル・マドリーのロングカウンターへのリバプールの対応は、大きな注目ポイントです。

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注目ポイント② リバプールのプレッシングvsレアル・マドリーのプレス回避

 また、レアル・マドリーがポゼッションを握る時間帯の、リバプールのプレッシングvsレアル・マドリーのプレス回避、の構図にも注目です。リバプールは90分間を通して強烈なプレッシングを仕掛けてきますが、プレス回避の能力が非常に高いのもレアル・マドリーの特徴です。

 ボール周辺に選手を寄せ、密度を高めることでプレスの強度を上げるクロップのサッカーですが、密集を作る分、別の場所にはスペースが生まれます。プレス回避が得意なレアル・マドリーの中盤は、リバプールのプレスを掻い潜って、スペースにボールを運ぶことを狙うでしょう。ロングカウンター同様、スペースを使った攻撃は今季のレアル・マドリーが最も得意とするところです。

 中盤の攻防において、リバプールのプレッシングが勝るか、レアル・マドリーのプレス回避能力が勝るかは、大きな見所でしょう。

まとめ

 今回の記事では、リバプールvsレアル・マドリーの対戦カードとなった21-22シーズンのCL決勝戦を展望してきました。欧州チャンピオンを決める大会の決勝にふさわしい、現在の欧州フットボールを牽引する2チームの対戦となりました。

 リバプール、レアル・マドリー共に戦術的に万能なチームです。そんな中でもリバプールには激しいプレッシングと破壊力満点の攻撃、レアル・マドリーにはオープンスペースからの攻撃と勝負強さ、という明確な武器があり、決勝戦は両者の強みを戦わせる試合になるでしょう。

 どちらのチームが今季の欧州王者に輝くのか、結果を予想するのは難しいですが、是非ともリバプールにビッグイヤーを掲げてほしいと思います。