【考察】プレミアリーグの天王山 リバプールvsマンチェスターシティ

 10月3日、プレミアリーグ第7節、リバプールvsマンチェスターシティのゲームが、リバプールのホーム、アンフィールド行われました。結果は2-2のドロー。これまで、数々の名勝負を繰り広げてきたクロップとペップのチームですが、今回も例に漏れず、非常にハイレベルな応酬となりました。本記事では、今シーズン最初のリバプールvsマンチェスターシティのゲームを考察していきます。

シティペースの前半 リバプールは苦戦

 ゲームの立ち上がり、ホームのリバプールはロングボールを多用します。相手陣地に侵入し、前線から激しいプレスをかけるためのロングボールでした。リパプールは先のチャンピオンズリーグのポルト戦でも立ち上がりからロングボールを多用しており、立ち上がりに相手を押し込むためにチームとして取り組んでいる戦い方なのでしょう。

 リバプールの前線からのプレスの狙い目は、何といっても攻撃から守備に切り替わる瞬間です。クロップのチームの代名詞でもあるゲーゲンプレスは、ボールを奪われた瞬間にカウンタープレスを仕掛けることで相手が攻撃陣形を作る前にボールを奪い返そうという考え方です。守から功に切り替わる瞬間は、陣形も整っておらず、激しくボールを奪いに来られると、攻撃側もボールのキープが難しくなります。実際、この試合の前半の立ち上がりは攻守の切り替え時におけるリバプールの激しいプレスが機能していました。ボールを手にしても陣形が整っていないシティは、効果的にリバプール陣内に侵入するには至りません。ボールを回収したリバプールは、再びシンプルな攻撃を仕掛け、相手ボールになればまたプレス、という繰り返しを続けていました。

 しかし、前半も15分を過ぎたあたりからシティがペースを握り始めます。リバプールによるトランジション時の激しいプレスの回避に成功し、シティが陣形を作った上でビルドアップを試みるシーンが増えてきます。リバプールの非常に強度の高いプレスを剥がし、スペースにボールを持っていくことのできるシティの選手はさすがでした。特に、カンセロとベルナルド・シウバは狭いエリアでリバプールの選手に圧をかけられてもボールを保持し、スペースの味方にボールを渡すことでチームに時間を確保していました。

 リバプールの切り替え時のプレスからの脱出に成功したシティ。次第に陣形を作ってのビルドアップの時間が増えてきます。シティのビルドアップは世界トップレベルです。リバプールとしても、一度シティの攻撃陣がセットされると激しくボールを奪いには行かず、守備陣形をセットします。とはいえ前がかりなのがリバプールの特徴。ハイラインを維持し、アンカーのファビーニョも比較的高い位置に構えます。そして3トップがパスコースを遮断しながらシティのボールホルダーとの距離を詰めるという、リバプールらしい前線から圧力をかける守備ブロックを展開します。

 しかし、そんな圧力をかいくぐって前進するシティのビルドアップはさすがに巧みです。リバプールは4-5-1で守備陣形を組みますが、リバプール守備陣の間を取るのが非常に上手いシティ。守備ブロックを形成する選手間、ライン間でうまくボールを出し入れし、リバプール守備陣を揺さぶります。そして、ポゼッションで相手陣内に押し込むと、カウンタープレスが得意なのはシティも同様。リバプールにボールを奪われると、すぐさまプレスを慣行。リバプールのカウンターの芽を摘みつつ、攻撃を続けます。前半30分以降はシティが押し込む展開が続き、その中でゴールに迫るチャンスも何度か作りました。リバプールとしては何とか凌いでハーフタイムを迎えることになりました。

リバプールが盛り返した後半 互いに点を取り合う展開に

 特に前半の最後の時間帯は押し込まれることが多く、苦しい局面を無失点で切り抜けたリバプール。後半は形勢を盛り返そうと、攻勢に出ます。前半は自陣に押し込まれ、攻撃に出ようとしてもシティのカウンタープレスに苦戦していたリバプール。後半はゲームの主導権を奪い返そうと、さらに勇気をもって前に出たように思います。この辺りがクロップ流でしょうか。

 具体的には、シティが陣形を整えてビルドアップを開始する際、プレスの位置を高めたと思います。マネやサラーがシティのセンターバック陣までプレスをかけ、ウォーカーとカンセロにはジョーンズとヘンダーソンがプレスに行きます。ディフェンスラインの選手も、前半よりも積極的に前に出て相手を潰しに行くようになりました。陣形を下げず、勇気を持って陣形を押し上げたことで中盤でのプレスの強度が増し、ボールを回収してシティを押し込めるようになりました。

 そして、自陣に押し込まれた際にも3トップを前線にできる限り待機させます。非常にアグレッシブな戦い方を選択したクロップ、うまく行かなかった際のリスクも大きく、なかなか他のチームがマネできることではないと思います。何より、前に出るという選択をすれば自陣のスペースも広くなります。シティのような高い攻撃力を誇るチームを相手に自陣に広大なスペースを残すことは、非常にリスクの高い行為です。しかし、それでもクロップは前に出ることを選択し、チームとしても崩れることなく非常に上手く機能しました。選手としても、心理的に怖さを感じる部分もあると思いますが、クロップが作り上げてきたチームは恐れることなく勇敢にプレスを仕掛け、試合の形勢を取り戻しました。

 後半、リバプールが前に出るという選択をし、勢いを取り戻したことで、試合内容は非常にスリリングで面白いものとなりました。確かにリバプールがシティゴールに迫るシーンも生まれましたが、一方でシティの攻撃もリバプールの激しい守備をくぐり抜け、ゴールに迫るシーンも生まれます。後半はペップとクロップのチームの戦いらしい、攻守の入れ替わりが激しい非常に見応えのあるゲームになりました。その中で、生まれた4ゴールはどれもスーパーなものでした。また、ゲームの最終盤にはファビーニョが迎えた決定機をロドリが魂のスライディングで阻止。白熱したゲームはドローで幕を閉じました。

 リバプールとしては2度リードした展開。また、ホームということもあり勝ち切りたかった試合です。先制した後、そして勝ち越しの2点目を奪った後はプレーヤーとしては心理的に非常に難しい時間にもなります。時間的な意識も働き、それまで前に出ていた姿勢が少しだけ守備的になってしまうことは防ぐことが非常に難しいでしょう。シティには、そんな少し受け身になってしまった隙を的確に突かれてしまったと感じます。

 この試合で、今季もシティの強さを強く認識させられました。今季もこのままいけば優勝を争うチームでしょう。しかし、リバプールもシティと争える力を見せました。ここにチェルシーを加えた3チームが、シーズンを通してどれだけコンスタントに結果を残し続けられるか、CL等、他のコンペティションでの競争も含め、非常に興味深いシーズンとなりそうです。